アカデミー賞

　アカデミー賞とは、１９２７年５月１１日に創立された「映画芸術科学アカデミー(The Academy of MotionPicture Arts and Sciences)」と呼ばれる団体に所属する会員(監督・俳優・女優他著名な映画人等、アメリカ映画界に携わる人達の集り)の投票により、毎年１回決定され、授与する賞のことです。

　同会は本来、当時のＭＧＭ撮影所のボス、ルイス・Ｂ・メイヤーが労働組合に頭を痛めていたことから計画した、調停目的の組織でした。創立時、会員の３分の２以上が撮影所とプロデューサーの大物たちに占められていたことからも、それは明らかです。

　では賞そのものを発案したのは誰かというと、初代会長の俳優ダグラス・フェアバンクスです。当初、投票権を持つのはたった５人の中央選定委員会のみであり、選定方法に疑問を持つ声も少なくはなかったそうです。

　第１回の特別賞チャールズ・チャプリンの「少数の人間の決めた賞など、たいした名誉ではない」という発言もそうですし、第２回の女優賞メアリー・ピックフォードが全員を自宅で接待していたスキャンダルなどが、それに輪をかけることとなっています。第３回からは公平を期すためと賞を盛り上げるために、全員が投票権を持つようになっています。

　アカデミーに入会するには、映画芸術、科学に貢献したと認められ、同会員の推薦を必要とします。創立時は参加人数も少なく、２７５名だった会員も現在では６０００人を越え、全米だけでなく世界中にTV中継され、アメリカ映画界最大のイベントとなっているので、今後も増え続けていくとおもいます。

　開催は毎年三月か四月で、ロサンジェルス地域で年内に一週間以上、有料で上映された３５ミリ以上の作品に限られます。記念すべき授賞式の第１回は1929年5月16日、ローズヴェルト・ホテルで２００人だけが集まり、わずか１２部門、授賞式はたったの４分２２秒で終わったといわれています。ですが年々会員も増え一般参加者も加わることとなって、会場も変えて、第２５回からはテレビ中継されるようになりショー的要素も強まることとなりました。

　数ある部門の中でも歴史が古く、かつ名誉あるのは、【作品賞】【監督賞】【脚本賞】【主演男優賞】【主演女優賞】の五部門で、いわゆる五冠と呼ばれているものです。また授賞式と言えば、その司会者とプレゼンターの華やかな顔ぶれも見どころの一つですが、どちらも第３回からで、初の司会は俳優のコンラッド・ネイゲルが務めました。

　受賞者には各部門ごとに、その名も有名な黄金の「オスカー像」が贈られます。アカデミー賞＝オスカーの図式が示す通り、現在では「オスカー」は映画人にとっては栄光のシンボルとして、ファンにとっては尊敬と親愛の名称として親しまれていますが、贈られる黄金像には正式な名前はなく、「オスカー」とはニックネームです。何故、受賞者に送られる像を「オスカー像」と呼ぶようになったのでしょうか。

　最初のころは単に小像（Statuette）と呼ばれていました。それではいつ頃から「オスカー」と呼ばれるようになったのでしょうか。諸説紛々の中、信憑性の高い説としては、1931年、アカデミー事務局に勤める女性職員マーガレット・レリックがその小像を見て発した言葉からというものです。「私の叔父さんのオスカーにそっくり」。以後、次第に人々は小像をオスカーと呼ぶようになります。 そして、公の場（第6回授賞式・1934年）でウォルト・ディズニーが「オスカーを手に出来てうれしい」とスピーチしたことで、「オスカー」はハリウッド映画人に完全に認知されることになりました。

　オスカー像をデザインしたのは映画芸術科学アカデミー（以下アカデミー）が創立された当時のMGM美術監督のセドリック・ギボンズです。ギボンズのデザインをもとに彫刻家ジョージ・スタンレーが粘土像を作り、さらに彫像家アレックス・スミスが、高さ約34センチ、重さ約3キロの像に金メッキを施し完成させました。

　過去に、そのオスカー像を最多個数獲得した作品は、長年にわたり第32回（1959年度）作品「ベンハー ( ウィリアム・ワイラー監督)」の11部門受賞が最多でしたが、第70回（1997年度）アカデミー賞で「タイタニック（ジェームズ・キャメロン監督）」が11部門を受賞し、ついにベンハーの持つ記録とならびました（その後、第76回で「ロード・オブ・ザ・リング／王の帰還」も11部門受賞）。

　次に「ウエスト・サイド物語 (ロバート・ワイズ／ジェローム・ロビンズ監督)」が10個、以下、「恋の手ほどき (ビンセント・ミネリ監督)」「ラストエンペラー (ベルナルド・ベルトルッチ監督)」、そして、1996年度の「イングリッシュ・ペイシェント (アンソニー・ミンゲラ監督)」が9個となっています。

　アカデミー賞は、これまで長年に渡り2月中旬にノミネート発表があり、授賞式は３月下旬となっていましたが、第76回アカデミー賞では1月下旬にノミネート発表、授賞式は2月下旬という日程に変更されました。賞の対象となるのは授賞式の行われる前年度に公開された映画です。

　従って2004年に授賞式の行われるアカデミー賞は、2003年1月より2003年12月までに公開された映画（1/1〜12/31迄に連続1週間以上ロサンゼルスの商業劇場で）となり、2003年度のアカデミー賞と呼ばれます。

　五冠と呼ばれている【作品賞】【監督賞】【脚本賞】【主演男優賞】【主演女優賞】以外の賞は、【助演男優賞】【助演女優賞】【外国語映画賞】【脚色賞】【撮影賞】【美術賞】【衣装デザイン賞】【編集賞】【録音賞】【オリジナル作曲賞 (ドラマ部門)／ (ミュージカル・コメディ部門)】【オリジナル歌曲賞】等などがあります。

　映画界最大のイベント「アカデミー賞」。その第1回から現在に至るまでの主要部門（作品賞・監督賞・脚本賞・主演男優賞・主演女優賞等）を一覧にまとめました。